一升餅とお餅の歴史とは?

特集 お餅の魅力1 

一升餅 子どもの誕生祝いとお餅の歴史

へんばや商店ではお餅にあんこが包まれた「へんば餅」や「さわ餅」以外にも、昔ながらの手作りのお餅も取り扱っております。
実は日本人にとってお餅はとても長い歴史があり、奥深いことをご存知でしょうか?
鏡餅を代表するように、お正月などおめでたい席や人生の節目で食べる機会が多いお餅。
今回はへんばや商店で取り扱う「一升餅(いっしょうもち)」と「お餅の歴史」についてご紹介いたします。
※ご紹介の内容は、「ものと人間の文化史89(糯・餅)著者:渡部忠世・深澤小百合 出版社:法政大学出版局」を参考文献にしております。

一升餅(いっしょうもち)とは?

一升餅をご紹介する前に、一升という単位を確認しておきましょう。
一升(いっしょう)を別の言い方に変えると、
・約10合(生米 約1.5kg、蒸し米 約2kg)
・約1,800ミリリットル
となります。
お米一升や日本酒や調味料が入った一升瓶という言葉は、よく耳にする方も多いかもしれません。
「一升餅」とはその名の通り一升(約2kg)のお餅です。生まれて1年目を迎えるお子様の誕生祝いで用いられるお餅として、一升(いっしょう)という語呂合わせでお子様の健康や成長を願う「一生餅(いっしょうもち)」という意味もあります。
一升餅でお子様の1歳を祝う習慣は、古くは「ムカレ」、「ムカイドキ」、「ムカワリ」、「ムコヅキ」と呼ばれ、親戚やお産婆さんを自宅に招いて行われてきました。現在では、親戚のみで行われている方がほとんどのようです。
一升餅での誕生祝いは、
・お子様にお餅を踏ませる
・お子様にお餅を背負わせる
・お子様をお餅の上に座らせる
など、地域によってとても様々です。また、誕生日前から歩きだしたお子様は、「親の足をとる」や「親元を離れていく」など良くないことと考えられてきたため、一升餅を背負わせてわざと座らせたり、餅を投げつけて歩かせないようにするという風習もあります。
誕生祝いを終えた後の一升餅は、切り分けて参加者にお配りします。
また、一升餅は紅白の重ね餅(紅1個、白1個)が用いられるのが一般的でしたが、最近では餅を切り分ける手間を省けるという利点から、一升分の丸餅(紅20個、白20個)をお買い求めいただくお客様が増えており、お餅40個を入れたリュックをお子様に背負わせる等して、誕生祝いを行われています。

さて、ここでひとつ疑問が浮かびます。
そもそもなぜお子様にお餅を踏ませたり、背負わせたりするのでしょうか?

調べてみると、その答えは日本人とお餅の歴史の中にありました。

お餅の歴史 日本人の暮らしを支え続けてきた稲信仰

餅(もち)は古くは「もちひ」と呼ばれ、平安時代中期に作られた辞書「和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」に、餅を意味する毛知比(もちひ)の記述があります。
餅という言葉を、私たちが連想する「搗き餅(つきもち)」と解釈しはじめるのは室町期以降で、江戸時代には「もち」は日常語となります。
私たちにとってのお餅は日常の食べ物となっていますが、元々はとても特別な食べ物でした。その理由には、農耕民族として歴史を紡いできた日本人にとって欠かせない「稲(いね)」が関係しています。
餅の原材料である「もち米」は、たわわに実った稲穂から収穫されます。秋頃に稲穂がゆらゆらと揺れる田園の様子は、古来より変わらない日本の原風景です。
そんな稲穂は、元々は小さな「稲」から育った姿。「稲」は一粒のもみ殻から発芽し、無数の籾(もみ)を結実(けつじつ)させます。そのため、日本人は「稲」に対して神聖な存在を感じ、特に米粒を凝縮させたお餅には新しい生命を更新、再生する力が含まれていると信じられてきたそうです。
誕生祝いで用いられる一升餅には、そんな「稲」の生命力を身体に取り入れるという考えがありました。

お餅の紅白色や形が丸い理由は?

縁起がいいお餅といえば、紅白餅を思い浮かべる方が多いかもしれません。
紅白餅の色には、新生児を赤ちゃんと呼ぶように誕生を意味する「赤色」と死別やお別れを意味する「白色」、そして2つの色を組み合わせることで、人の一生を表しているといわれています。
また、丸いお餅の形には「円満」という意味があることから、紅白餅には「人の一生を円満に過ごす」という願いが込められているといえます。
お餅の歴史において「稲の生命力を取り入れる」という考えと合わると、誕生祝いだけでなく、結婚や出産、葬儀などの慶弔において、お餅が重要な役割を担ってきたことにもうなずけます。

お餅の歴史や意味を知ることで、今も昔も変わらず大切な方たちを想い続け、引き継がれてきた「ひと」の時間を感じていただけましたら幸いです。
一升餅で一生に一度のお子様の誕生祝いをされてみてはいかがでしょうか。


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